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「宮司さま…、お願いです……っ」 「もういい、諦めろ」  弾かれても諦めずに風を起こす咲良を、守弥がそっと制止する。 「でも……っ」 「いいんだ。もうやめておけ」 「良くはありませぬ! 一生に一度の大事なご婚儀をわたくしは台無しにしてしまったのです! まだ、…………まだ間に合うかも知れませぬのに……っ、間に合うかも……知れませぬのに……っ。 お離しくださりませっ、お願いにございます……っ」 「いいから」 守弥は取り乱しかけている咲良を腕の中に抱き込む。 「ダメですっ。 この世界に連れて来て頂く間、もりや様はわたくしを不安がらせないようにと優しくしてくださいました。 あんなふうに優しくされるべきなのは咲耶なのです。 わたくしではっ、わたくしでは、もりや様が幸せになれませぬっ!」 「落ち着け。 お前が姉を守ろうとしたことも、身代わりを引き受けたことも、一生懸命家族を思ってしたのだろう? 俺は間違っているとは思わない。 同じ立場なら、俺もしていた筈だ。 だから、もう泣くな」 「………………?」 咲良は漸く気づいた。 自分の目から大粒の涙がこぼれている事に。

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