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元々いた世界との道が完全に閉じた事で、咲良は守弥の両親に詫びに行かねばと言い出した。
「いや、それは不可抗力だろ。
言い伝えが違っているなんて、誰も思い付かないんだから」
「でも、それではわたくしの気が済みませぬ。
大事なご婚儀を潰してしまったのに、知らぬ振りをしているなど……」
申し訳なくて居たたまれないのだろうが、境界を越えて来て疲れていない訳はない。
「近いうちに必ず連れていくから、今日は体を休めろ。
取り乱したままで出歩くのは良くない」
「………っ、………はい……」
先ずは体を休めるのが先決だと守弥に言い含められて、咲良は渋々引き下がった。
時雨とばあ様が建物の内外へ結界を張ったため、抜け出す事が不可能になったのもある。
決して納得した訳ではないが、頑固な態度を取る事も良くない。
今まで禁域の宮から出たことが無い咲良にとって、境界を越えた世界は更に未知の世界になる。
大人しく従わなければ、更に守弥へ迷惑をかける結果になるのも分かったからだ。
「聞き分けてくれて良かった。
ある程度は俺から話しておくから、落ち着いてから顔合わせするようになる筈だよ。
丁度良さげな着替えも明日持ってくる。
じゃ、そろそろ帰るね」
ニコニコしつつも、更に結界をきつく結び直して時雨は帰っていった。
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