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寂寥と怒り
少しだけ時を遡る。
咲良が迎えに来た守弥の元へ歩いて行ったあと、宙を舞っていた花びらが逆巻く風に流され始めた。
「さくら、さくらぁ……っ!」
鬼の腕に抱かれて花びらの渦に巻かれていく小さい影を追うように、付喪神達がわらわらと泉の上へ跳ねる。
あの鬼は狼藉をはたらく様子はない。
だが、自分の世界に戻ってから咲良を酷い目に遭わせないとは言いきれない。
境界の扉が閉まる瞬間に取り返そうと、付喪神達は考えていたのだ。
「咲良、こっちに手を伸ばせ!」
「さくら!」
風の渦めがけて突っ込もうとした瞬間。
しゃあんッ!!
一際大きな鈴の音が響いた。
「「うわあああっ!!」」
いきなり変わった風に巻かれて、付喪神達は咲良の傍から弾かれた。
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