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『わたくしが小さかったころに、宮司さまのお嫁さんになると困らせた事を覚えていらっしゃいますか?』
「ええ。
よぅく覚えておりますとも」
『宮司さまは寝食を忘れて鍛練されるので、本当に心配だったのです。
もうわたくしは宮司さまのご飯をお作りすることが出来ませぬゆえ、ちゃんと三度のご飯を食べてください。』
「あなたのぷりんがあれば、なぁんにも要らないのですがねぇ……」
『氷室に入れてあるぷりんだけでなく、ご飯とおかずもですよ?
ちゃんと食べてくださらなければ、魂魄になって戻って来たときに拗ねますからね?』
「拗ねてしまうのですか……?」
クスクス笑っている筈なのに、声が少しだけ詰まる。
手紙のほとんどは、宮司を気遣う言葉ばかりだから。
『沢山のことを教えていただいたのに、何もお返しできないままで旅立ってしまうわたくしをお許しください。
お役目を終えたら真っ直ぐこちらへ戻りますゆえ、ずうっと宮に置いてくださいませ。
それでは、行って参ります。
ちゃんとご飯をお召し上がりくださいね?
咲良より』
「…………」
一口、ぷりんを口に含む。
途端に、涙が一筋流れ落ちる。
「やけに甘じょっぱいですねぇ……」
甘い甘いぷりんは、やはり涙の味がした。
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