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「咲良っ!どこにいんのよっ!」 どごん! ばたん! 乱暴に引き戸を開け、襖を開け放つ。 だが、目的の相手は出てこない。 「咲良あっ!」 いつもなら、鳥居をくぐった直後に姿を見せていた。 これだけの騒ぎを聞いていて出てこない筈がないのだ。 学校から帰宅して、咲良にも誕生日のプレゼントを渡そうと言う話をした時に、両親の反応がおかしいところで気がついた。 なにかがあったのだと。 口ごもる両親を問い詰めて粗方聞き出した。 「咲良は鬼が迎えに来て向こうの世界へ行った」などと信じられるものではない。 贅沢な暮らしを捨てたくない。 今さら苦労などしたくはない。 可愛い咲耶を失いたくない。 そんな理由で? 同じ日に生まれた咲良はどうでも良いというのか!? 何よりも、咲良自身が生け贄になると申し出たと聞いて頭が沸騰した。

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