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◆◇◆◇◆ 宮から摘まみ出された咲耶は、迎えに来た車に乗って家に帰った。 部屋に戻って、取り敢えず呼吸を整える。 少し震える手で封を開けると、綺麗に折り畳まれた和紙が出てきた。 まるで、戦国時代の手紙の様な……。 『咲耶へ』 筆で書かれた流麗な文字に、一瞬手が止まる。 『この手紙を読んでいるということは、今、かなり怒っているでしょうね。』 「……そうね。 かなり頭に来てるわよ」 『自分の身の振り方は自分で考える。余計なことをするなと咲耶は怒ると思います。』 「よく分かってるじゃないの」 関わり合えた時間は決して多く無かったけれど、自分でも気付かないような事も咲良は見抜いていた。 不思議なほどに。 『でも、言えませんでした。』 「………………」 『他のことならどうにかなるかも知れないけれど、咲耶は目に見えない物が一番苦手ですから。 わたくしに会いに来るだけでも付喪神や式神の気配が怖くて仕方ないのに、鬼や魑魅魍魎がひしめく世界に連れて行かれて平気でいられますか? 痛みは感じなくても、生きながらに食べられる感覚はあるんです。 そんなことをさせてまったら、咲耶の心はきっと壊れてしまいます。』 「………………勝手に決めないでよ」 そう。 勝手に決めて欲しくなかったのだ。

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