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『咲耶のことを宮司さまはうるさい乱暴者だと仰るけれど、わたくしは違うと思っています。
だって、外の世界を知らない咲良に沢山の事を教えてあげると言ってくれた。
ふたり分、頑張って生きる。
痣を無くすためにお医者さまになるとも言ってくれました。
それがどれだけ嬉しかったか分かりますか?』
「………………」
『努力を惜しまず一生懸命頑張り続ける咲耶は、辛抱強くて心の強い優しい子です。
でも、その心の強さを持っていても、贄送りで鬼の世界に連れて行かれたら正気を保てません。
心が壊れたままで死んでしまったら、咲耶の魂魄は輪廻の輪に戻れない。
そんなのは嫌です。』
「だから代わりに行くって、アタシが納得できるわけないじゃいの」
『どんなふうに話しても、納得はしないでしょう。
でも、大好きな咲耶が居なくなるのは嫌です。
皆が悲しむのも、絶対嫌です。』
皆が悲しむから嫌だ。
だから代わりを申し出たというのか……。
「ばかじゃないの……。
アタシが行けば皆が悲しむから嫌?
じゃ、咲良はどうなのよ。
あんたが行っても、誰も悲しまない訳じゃないでしょ……」
あの宮司や宮にいる神職たちの嘆きようを見れば、どれだけ咲良が可愛がられていたかうかがい知れる。
両親や家族に咲耶が溺愛されたのと同じ。
いや、それ以上だった筈だ。
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