77 / 668
・
「先ずは、風起こしの塩梅を見なければ……」
直径5メートルほどの円を地面に描き、外側に円を囲むようにもうひとつの円を描く。
一定間隔で風を閉じ込める呪符を置き、円の中心へ進んだ。
呼吸を調え、気を落ち着けていく。
境界を越えてきた自分を受け入れてもらえるように。
ひんやりした空気に溶け込むように感情を抑え、薄暗い世界に潜む小動物の気配に同調していく。
………………しゃあん……。
微かにだが、同調できた証の音がした。
ゆっくり、片膝をつく。
呼吸を落ち着けながら、咲良はそうっと目を閉じた。
ともだちにシェアしよう!