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「先ずは、風起こしの塩梅を見なければ……」 直径5メートルほどの円を地面に描き、外側に円を囲むようにもうひとつの円を描く。 一定間隔で風を閉じ込める呪符を置き、円の中心へ進んだ。 呼吸を調え、気を落ち着けていく。 境界を越えてきた自分を受け入れてもらえるように。 ひんやりした空気に溶け込むように感情を抑え、薄暗い世界に潜む小動物の気配に同調していく。 ………………しゃあん……。 微かにだが、同調できた証の音がした。 ゆっくり、片膝をつく。 呼吸を落ち着けながら、咲良はそうっと目を閉じた。

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