78 / 668

地面から空へ向かって差し出す手が、微かに風を起こした。 振りかぶって風をつかみ、微風を小さな小さな渦に変える。 歪みの無い、綺麗な渦。 咲良が起こした渦は、こちらの世界との拒否反応が見られない。 両手で渦を包み、一気に引き伸ばす。 「………………」 引き伸ばした渦は、咲良の手足の動きによって流れとなり、結界の中でつむじ風のようになっていく。 二重に張った円の中で、流れの勢いが増す。 だが、決して鎌鼬のような切り裂くものではなかった。 『大丈夫。 此方の世界との反発は見られない……。 ならば、誰をも傷つけずに彼方の世界と結べるかもしれない……』 そう感じた瞬間、渦を巻いた風がほどけていく。 「あ…………っ」 ほどけた風が反発したまま、咲良を結界の外へ弾き飛ばした。

ともだちにシェアしよう!