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ぽふんっ。
「………………っ」
風に弾かれた咲良は、砂利が敷き詰められた地面に叩きつけられた筈だった。
「………………? 痛く……ない……」
あちこちを擦りむいて痛い筈なのに、全く痛くない。
「…………大丈夫か?」
「も、もりやさま……っ?」
頭の上から聞こえたのは、紛れもなく守弥の声。
「あの、な、なぜ、こちらに?」
「何となく目が覚めたらお前が居なくなっていたから、何処に行ったのかと探してた。
そしたら、神楽舞いをしているお前を見つけた。
弾かれるとは思わなかったが……。
…………………………で、一体何をしようとしてたんだ?」
「…………あ、あの……申しわけありませぬ。
昨夜は弱い風しか作れなかったので、狭い結界の中でならどうなるのか試しておりました……」
たしなめられて悄々(しおしお)と俯いていると、小さな子供のように肩に担がれた。
縁側に上がり、守弥は寝室へと向かっていく。
「も、もりやさま……?」
「朝までまだ時間がある。
気になることは山ほどあるだろうが、今は寝ておけ」
「でも……っ」
「お前一人で全部背負わなくていい。
厄介な事は大人が一生懸命悩むものだ」
部屋に入ると、狩衣を羽織わされた。
「あ、あの……、でも……」
ベッドに問答無用で寝かされ、両方の袷(あわせ)は守弥が体の下に敷いて押さえた。
「…………子供はとっとと寝ろ。
言うことを聞かないでうろつくなら、毛布でぐるぐる巻きの簀巻きにしてしまうぞ」
「子供では……」
「寝ろ」
「う、………………はい……」
完全に抜け出せない状況で守弥に言い渡され、咲良は素直に従うことにした。
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