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「お前、……いや、咲良」
「……?…………はい」
「気になることは山ほどあるだろうが、あまり思い詰めなくていい。
早く元の世界との道を開こうと焦る気持ちも分かる。
だが、一人で出来ることは限られているだろう?
背負い込まなくていいから、少しは体を休めとけ」
「………………っ。
…………でも……っ、わたくしが余計な真似をしなければ、もりやさまは花嫁を受け取っていた筈……、ひゃ……っ」
弾みで起き上がった咲良を、守弥は再び心臓の真上へ引っ張った。
「確かに間違えて此処に来たのはお前だ。
だが、その原因は妻乞いに関する言い伝えが間違っていたからだろう?
そこまで責任がある話しか? 」
「………………」
「何百年も前の話が間違えていたことまで責任を負うな。
俺はそこまで求めていない。
自分がこれからどうなるかだって分からないだろ?」
「………………っ」
「自分を大事にしろ。
後回しにばかりするな」
頭の上の方から聞こえる声は、あくまで穏やかだ。
なのに、怒っているようで咲良は言葉が継げない。
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