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「子供は子供らしくするものだ」 「わっ、わたくしは……子供ではありませぬ……」 「俺に比べれば、十分子供だろう?」 「子供ではありませぬ……」 「子供だ。 外の世界を知らない幼い子供」 「………………っ」 安心感をもたらす腕に包まれ、熱を帯びた頬を撫でられる。 「子供では……ありま……せぬのに……」 「子供だ。 素直に甘やかされてしまえ。 時雨もお前を気に入ってるみたいだから、あいつもお前を猫っ可愛がりするだろうな。 うちの親もそうだし、姉や弟や妹達もお前を甘やかして振り回すぞ、きっと」 「そんな……こと……」 「子供らしさを取り戻すことから始めればいい。 安心しろ。 うちは大家族だから、一人増えるくらいなんともない」 「で……も……」 「取り敢えず寝ろ」 「………………」 頬が熱い。 いや、体も熱い。 身体中が脈打って血液が逆流していくみたいに。 なのに、包み込む温かさと響いてくる鼓動に逆らえない。 守弥の腕の中で、咲良は眠りに落ちていった。

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