83 / 668
・
「子供は子供らしくするものだ」
「わっ、わたくしは……子供ではありませぬ……」
「俺に比べれば、十分子供だろう?」
「子供ではありませぬ……」
「子供だ。
外の世界を知らない幼い子供」
「………………っ」
安心感をもたらす腕に包まれ、熱を帯びた頬を撫でられる。
「子供では……ありま……せぬのに……」
「子供だ。
素直に甘やかされてしまえ。
時雨もお前を気に入ってるみたいだから、あいつもお前を猫っ可愛がりするだろうな。
うちの親もそうだし、姉や弟や妹達もお前を甘やかして振り回すぞ、きっと」
「そんな……こと……」
「子供らしさを取り戻すことから始めればいい。
安心しろ。
うちは大家族だから、一人増えるくらいなんともない」
「で……も……」
「取り敢えず寝ろ」
「………………」
頬が熱い。
いや、体も熱い。
身体中が脈打って血液が逆流していくみたいに。
なのに、包み込む温かさと響いてくる鼓動に逆らえない。
守弥の腕の中で、咲良は眠りに落ちていった。
ともだちにシェアしよう!