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「………………んあ……?」 包み込む腕の力強さに心地よさを覚えて、咲良は薄く目を開けた。 『だぁ…………れ……?』 いつも傍にいた付喪神や式神とは違う気配。 纏う香りが違うから、宮司でもない。 起き上がって確かめればいいだけなのだが、離れがたくて起き上がる気持ちにならない。 服地を通して伝わる鼓動と熱も、抱き締めている人物の香りも咲良を引き付けてやまない。 熱を分け合うように抱き締める腕に、少しずつ吐息が熱く甘くなっていく。 愛しげに耳殻をなぞる指も、咲良の中の熱を煽りたてる。 『離れたくない……。 離したく…………ない……』 甘い吐息をこぼしながら頬を擦り寄せると、髪を撫で梳きながら頭の天辺に口づけが落とされた。

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