93 / 668
・
「………………んあ……?」
包み込む腕の力強さに心地よさを覚えて、咲良は薄く目を開けた。
『だぁ…………れ……?』
いつも傍にいた付喪神や式神とは違う気配。
纏う香りが違うから、宮司でもない。
起き上がって確かめればいいだけなのだが、離れがたくて起き上がる気持ちにならない。
服地を通して伝わる鼓動と熱も、抱き締めている人物の香りも咲良を引き付けてやまない。
熱を分け合うように抱き締める腕に、少しずつ吐息が熱く甘くなっていく。
愛しげに耳殻をなぞる指も、咲良の中の熱を煽りたてる。
『離れたくない……。
離したく…………ない……』
甘い吐息をこぼしながら頬を擦り寄せると、髪を撫で梳きながら頭の天辺に口づけが落とされた。
ともだちにシェアしよう!