102 / 668

「失礼いたします」 見習い巫女の出で立ちの少女が、お盆を手に居間へ入ってきた。 大皿や中皿を配置すると、パタパタと台所へ戻っていく。 「まあ……。 おばあちゃまったら、小さい式神さんをつくったのねぇ」 自然な色の白い髪の少女など、そうそういない。 しかも、瓜顔の面をしている。 新しい式神だと勘違いしてしまうのも仕方ない……。 『よりによって、新しい式神と勘違いされちゃったよ。 どうすんのさ、ばあさま……』 苦笑いをしながら時雨が見守る先で、姉たちが引っ掛けようと差し出した足を危なげなくかわし、その度に初雪のような髪がピョンコピョンコと揺れる。 「やるわね」 「これならどうよ」 汁物が乗ったお盆をそれぞれの手に持った咲良が一滴も溢すことなく姉二人の足をかわすと、やんやと拍手まで出る始末だ。 守弥も初めは心配していたが、咲良が姉たちを軽くあしらっているのを見て安心したのだろう。 台所にいるばあ様の手伝いに戻っていった。

ともだちにシェアしよう!