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悪気は無いのは分かっていた。
だが、小柄な咲良が三人からのちょっかいをかわしきるのも限界がある。
股下を潜り抜けてきたのを横合いから抱えあげ、空いた片手で父の蹴りを止めた守弥は、溜め息をつきながら三人を睨んだ。
「え~?いいとこだったのに止めないでよ」
「こんな活きのいい子はなかなか居ないんだから」
「そうだぞ、守弥。
これだけ活きのいい式神はなかなか居ないんだから、手合わせを止めるな」
「………………式神……これがか?」
肩に担いだ咲良を示すと、三人はうんうんと頷く。
「殆ど呼吸も乱れてないし、気の読みも悪くない。
見習いの子供を入れてるとも聞いてないから、どう見ても式神だろ?」
「………………」
なるほど。
小学生くらいの見習い子供が気を読んでかわしきることはありえない。
面をしている上に銀髪も自然だから、ばあ様の式神と判断した訳だ。
必死で笑いを堪えていた時雨はひきつけを起こしかけているし、台所のばあ様も明後日の方向を見てプルプルしている。
「式神じゃないぞ、これは」
「は……?」
「式神以外の何だってのよ」
「何処からどう見ても式神じゃないの」
「おばあちゃまの式神さんじゃないなら、守弥の式神さん?
ねぇねぇ、お母さんに抱っこさせて頂戴」
「だから…………式神じゃない……。
…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………嫁だ」
「「…………………………………………………………………………………………………………………………はい?」」
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