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ギクシャクしながら紐を解く花嫁を気遣う様子にも違和感がない。 ただ、弟妹の面倒を見てきたからだろうか、伴侶に対する態度というよりは子供を気遣うものに近い。 ……とても。 その咲良が、チョコンと座って三つ指をついた。 高く結い上げた初雪のような髪も、さらさらと音を立てて床にこぼれる。 長い髪なのに重そうな音ではない。 まるで、極上の絹糸が流れ落ちるような音だった。 「ご尊父さま、ご母堂さま、咲良と申します。 不束ものでござりますが、どうぞよろしくお願いいたしまする」 「あ、ああ……」 色彩に不釣り合いな綺麗な日本語。 子供はしないであろう言葉遣い。 だが、対の子として生まれて、ベッタベタに甘やかされて育ったような感じも見受けられない。 「顔を上げてちょうだい。ね?」 「……は、はい……っ」 畏まっていた咲良が恐る恐る顔を上げると、ごっきゅんという音がした。

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