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「呼吸を深くして、気を落ち着けてごらん」
指示通りに呼吸を深くしていくと、意識がゆっくり沈んでいく感覚になる。
「体の力を抜いて、呼吸も深くしようね」
「は……い……」
四肢の力が自然に抜けて、意識が淡い色の柔らかなヴェールに包まれた。
怖くはない。
不思議なくらいに絶対的な安心感が心を満たしていて、誘われるままに意識を水底に沈めていく。
「………………」
咲良が寝入ったのと同様に、守弥も眠りの淵へと落ちた。
「寝ちゃったわね」
「寝たな……」
「兄ちゃんの寝顔、久々に見た……」
「うーわ!うさこ寝顔も可愛いっ!」
「ふおお!睫毛ながっ!ホントに男かよ!」
「ねえねえ、寝てる間に確かめよっか!」
「俺、昨日確かめようとしたら、咲良に逃げられたんだよね……。ショック……」
「………頼むから………静かにしておくれ……」
用意を進めるばあ様の額にぶっとい青筋が浮いたのは、気のせいではあるまい。
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