114 / 668
・
風は、咲良の周りをゆるりと取り巻いた。
…………チリ………チリリ……。
心臓の真上に置かれた鈴が微かに鳴る。
チリ……チリ……しゃあん……っ。
…………しゃあん……、しりぃん……っ。
「おばあちゃま、守弥の鈴が……っ」
「聞こえておるよ。そのままにしておいておくれ」
それぞれが単純な音色ではなく、可愛らしい音色や荘厳な音色が重なって複雑な音を奏でており、咲良の鈴が音を響かせれば守弥の鈴が穏やかに応える。
しゃあんっ、………チリ……チリリィン……っ。
守弥の鈴が誘うように鳴り響けば、咲良の鈴が従うように応えた。
小さな鈴が立てる音量を遥かに越え、宮全体に響き渡っている。
「こんなに複雑な伴鳴りは見たことがないねぇ……。
どれどれ……。見極めてみようか。
風よ…吹きませい!」
咲良を取り巻いていた風が流れを変え、守弥の周りも吹き抜ける。
それぞれを取り巻き、そうっと持ち上げた。
ともだちにシェアしよう!