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狂った流れが直撃する……! そう誰もが思った時だった。 咲良の瞼がピクリと動いた。 『………………か……ぜ……』 「さくらっ!?」 『……あらぶるかぜよ……いかりをおさめ……やさしきながれにもどりませ……』 緋色の瞳は焦点を結んでいない。 意識の半分は夢の中に置いたまま、嵐のような風の端を指に絡め取る。 絡み取った風に息を吹き掛け、とりわけ激しい渦を押さえていく。 それでも、帯電した風は二人目掛けて向かってくる。 「あああっ!兄ちゃんが……っ!」 幾つかの稲妻が、守弥に向かっていく。 あんなものに打たれたら、たまったものではない。 誰もが目を覆った。

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