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『させませぬ!』
床をひと蹴りすると間隙を縫って守弥の前に立ち、咲良は風の刃と雷を受け止めた。
「「へ……?」」
『かぜはめぐみをはこぶもの。
みだりにきずをつけてはなりませぬ』
受け止めたものの勢いを受け流したあと、人差し指で小さな渦を作って流れに当てる。
………………しゃあぁん……。
それだけで、暴風がそよ風となって吹き抜けていく。
『ふふ……っ』
呆気に取られる面々が見えていないのか、可愛らしく微笑み、咲良は背後に庇っていた守弥をそうっと床に下ろした。
まるで、いつもそうしているかのように、自然に膝枕の体勢になる。
『もう、だれにもきずつけさせはいたしませぬ……』
黒髪を愛しげに撫でる様は、どうみても恋人同士にしか見えない。
そんな光景を繰り広げて数秒……。
ぱたり……。
守弥に覆い被さるようにして、咲良は意識を失った。
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