145 / 668

「ふぅ……、出来ました……」 文字のひとつひとつを見て抜けや間違いが無いか確認してから、咲良はゆっくり息をついた。 「おばあ様、ご確認をお願いいたします」 「どれどれ……」 最初から最後まで目を通し、間違いがないのを確認する。 「綺麗な仕上がりだねぇ……。 文字のひとつひとつに力が籠ってるよ」 「本当だ……。ほんのり文字が光ってる」 「とても俺達には真似できないな。 有り難う、咲良」 大きさも間隔も綺麗に整った文字は、目を凝らさなくても力が籠められているのが分かる。 ほんのり光る様は、まるで呼吸しているかのようだ。 「…………っ、そな、わたくしは、大したことはしておりませぬ……」 「そんなことはないぞ。 心を籠めて書いているからこそ、文字に力が宿ってる」 「…………っ、……あ、あう……」 守弥が目を細めて笑むと、真っ赤になって咲良は俯いてしまった。

ともだちにシェアしよう!