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「ふぅ……、出来ました……」
文字のひとつひとつを見て抜けや間違いが無いか確認してから、咲良はゆっくり息をついた。
「おばあ様、ご確認をお願いいたします」
「どれどれ……」
最初から最後まで目を通し、間違いがないのを確認する。
「綺麗な仕上がりだねぇ……。
文字のひとつひとつに力が籠ってるよ」
「本当だ……。ほんのり文字が光ってる」
「とても俺達には真似できないな。
有り難う、咲良」
大きさも間隔も綺麗に整った文字は、目を凝らさなくても力が籠められているのが分かる。
ほんのり光る様は、まるで呼吸しているかのようだ。
「…………っ、そな、わたくしは、大したことはしておりませぬ……」
「そんなことはないぞ。
心を籠めて書いているからこそ、文字に力が宿ってる」
「…………っ、……あ、あう……」
守弥が目を細めて笑むと、真っ赤になって咲良は俯いてしまった。
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