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「咲良や、二人のおさらいを手伝ってやっておくれ」 「あ、はっ、はい!」 「「げ…………」」 祝詞が出来たのだから流石に今日は無いものと思っていたが、ばあ様は見逃すつもりは無いらしい。 囲炉裏の向こうの卓袱台には、既に二人分の書道具が用意されていた。 「咲良が書いてくれるから放免、という訳にはいかないからねぇ。 いずれは先に立たなきゃいけないんだから、苦手は克服しておかないと」 「……親父や祖父さまはどうなんだよ」 「そうだよ、ばあ様。俺達だけなんてひどくない?」 「………………細かいことは気にしちゃいけないよ。 頭髪が薄くなってしまうじゃないか」 「「………………」」 「ばばがどれだけ頑張っても直らなかった悪筆だからねぇ。 咲良、しっかと教えておくれ」 「はっ、はい!」 「「………………」」 二人分のエプロンと腕抜きを咲良に手渡し、ばあ様は居間から出て行ってしまった。

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