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◆◇◆◇◆ 「……そこで息を止めて、ゆっくり引くと良いです」 「こ、こう?」 「はい。スーッと。……今度は綺麗に払えてます」 「咲良、ここは?」 「キュッと止めて一拍……、で、そぅっと離してくださいまし。 守弥さまも、綺麗に書けましたね」 悪戦苦闘する二人に、咲良は辛抱強く教えていた。 最初は手本に半紙を重ねて影写をしたのだが、そもそも留め跳ね払いが怪しかった。 いや、酷かったのだ。 ……かなり。 文字を書く以前の問題だと悟った咲良は、苦手なパーツを克服するのを優先した。 最初は手取り足取りだったが、如何せん咲良が小さいので腕が届かず。 ならばと、咲良を前に座らせて二人羽織状態を採用した。 微妙に苦しい体勢ではあるが、筆運びを覚えるにはなかなか良い。 しかし。 「ん~、甘い香りがするねぇ、咲良」 くんくん。 「ひあああっ!」 「ほっそい首もさ、なんかいいよね……」 さわさわさわ……。 「うひぁぁあ!」 「駄目だぁ……、ムラムラしちゃうよ」 むにむにむに……。 「ひぁあああああ!」 「そろそろやめておけ……」 時雨が咲良を襲いかねないため、却下された……。

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