147 / 668
・
◆◇◆◇◆
「……そこで息を止めて、ゆっくり引くと良いです」
「こ、こう?」
「はい。スーッと。……今度は綺麗に払えてます」
「咲良、ここは?」
「キュッと止めて一拍……、で、そぅっと離してくださいまし。
守弥さまも、綺麗に書けましたね」
悪戦苦闘する二人に、咲良は辛抱強く教えていた。
最初は手本に半紙を重ねて影写をしたのだが、そもそも留め跳ね払いが怪しかった。
いや、酷かったのだ。
……かなり。
文字を書く以前の問題だと悟った咲良は、苦手なパーツを克服するのを優先した。
最初は手取り足取りだったが、如何せん咲良が小さいので腕が届かず。
ならばと、咲良を前に座らせて二人羽織状態を採用した。
微妙に苦しい体勢ではあるが、筆運びを覚えるにはなかなか良い。
しかし。
「ん~、甘い香りがするねぇ、咲良」
くんくん。
「ひあああっ!」
「ほっそい首もさ、なんかいいよね……」
さわさわさわ……。
「うひぁぁあ!」
「駄目だぁ……、ムラムラしちゃうよ」
むにむにむに……。
「ひぁあああああ!」
「そろそろやめておけ……」
時雨が咲良を襲いかねないため、却下された……。
ともだちにシェアしよう!