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腕の中から抜け出すと、隣に座る守弥に咲良がしがみついた。 時雨が心底残念そうにため息をつく。 「全幅の信頼ってさ、いいよねぇ……」 「そう思うんなら、触りまくるのをやめろ」 「だってさ、うちの獣じみたのばっかじゃ詰まんないじゃない」 「………………」 「その点、咲良はさ、全然違うわけよ。 小さいのに妙に抱き心地がいいし、甘~い香りもするしさ。 お淑やかで健気でって、モロ俺達の好みのドストライクじゃない? しかも小動物っ気満載で滅茶苦茶可愛いし、可愛いし可愛いし……。ああ、ふるいつきたくて手がわきわきするよ」 「………………っ」 高速でワキワキする指に、咲良が息を飲む。 「時雨……、変態モードから戻ってこい」 「いやいや、まだまだこんなもんじゃないでしょ。 このまま背が伸びたら、きっともっと好みの状態になるんだよ?どうする? 可愛くて華奢でいい香りのする花嫁になったら、兄さんだって鼻血噴いちゃうかもよ」 「………………そこまでにしとけ」 在らぬ方向を見てウットリする時雨に、守弥もあんぐりと口を開けた。 と、同時に。 あの夢の中で見た未来の咲良を思い出し、一瞬だが体の芯が熱さを持ったのを気づかない振りをした。

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