500 / 668
・
奥向きに足を踏み入れた護矢比古に、里の男たちは驚いた。
「………!?」
「お前、どうやってここに!?」
「どうだっていいだろう!
俺には俺のやることがある!」
「ぐは!」
「っぐ…っ」
振り回す得物を避け、確実に一人一人を仕留めていく。
「傷は浅い。
少し寝てもらうだけだ」
『甘イナ。イッソ完全ニ…』
「言うな」
『………仕方ナイ』
気絶した男達を簀巻きにして転がす。
棒は折り、剣は曲げて使い物にならないようにしてから隠した。
ここへくる前にも、武器庫に忍び入って弓の弦を切り、武器の殆どを使えなくしてはある。
だが、すべてではない。
「あとどれだけ残ってるか…」
「それほど残ってはいませんよ」
「………っ!」
振り返った其処に、社の長がいた。
「あんたも邪魔をするなら…」
「私はここを束ねてはいますが、完全にあちらの言うことを聞いているわけではありません」
「………」
「貴方自身が分かっているのでしょう?
残された時間は決して長くはないのだと。
ついて来なさい」
「………」
油断してはいけない。
もしものために用心をしながら、護矢比古は長の後ろを追った。
ともだちにシェアしよう!