152 / 668

「で、どんな感じで……?」 「え……と、…………」 「「………………」」 守弥と時雨は言葉が出ない。 持ってきた縫いぐるみを、咲良は母親が赤ん坊を抱っこするようにしたのだ。 手元は少し危ういが、左胸に耳が当たるような体勢は間違いなく母親がするもの……。 「え、え? ちょっと待って咲良。俺ってそういう扱いなの?」 「………………うぅ……。はい……、申し訳ありませぬ……」 「………………おもしろいねぇ……。 咲良にとって、時雨はそうなんだねぇ」 縫いぐるみを赤ん坊に見立てるのは流石に辛いが、それが時雨だという前提で抱っこしている咲良を見ていると、何となくしっくりくることに守弥も驚く。 「なるほどねぇ……。 母親に子供がじゃれつく感じなら大丈夫で、如何わしい触り方なら駄目なのも頷ける。 輪廻の何処かで親子だったことがあるのかも知れないねぇ……」 「…………わたくしが、時雨さまの……?」 「可能性はあるねぇ」 「え、じゃ、何処かの人生で咲良が俺のお母さんだったってこと?じゃ、兄さんは?」 「…………咲良が安心するってことは、親か兄あたりかねぇ……」 「おもしろいね、何処かで繋がってるかもなんてさ」 ばあ様は、敢えてもうひとつの可能性を隠した。 『親兄弟じゃなければ、恋仲にあったか夫婦であったか……。 輪廻を巡る間、……千年近くも魂の核を守り通して来たなら、そっちの方が近いのかもねぇ……。 変に意識されておかしくなるより、黙っておいた方がいいだろうし……』 ばあ様が呈示しなかったことに時雨も気づいていたが、いずれ折りをみて話すのだろうと踏んで追求しなかった。

ともだちにシェアしよう!