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変化

◆◇◆◇◆ ……半月後。 「……麓へ……でございますか……?」 「そう。 ここに来て二ヶ月近くなったし、そろそろ外の世界を見るにもいいんじゃないかねぇ。 それに、夏の大祭の衣裳を合わせて持って来なきゃいけない時期だし。 どうかね、麓に行ってみないかい?」 「……でも、わたくしはこの通り……禍々しい印がござりますゆえ……」 「大丈夫。 此方の世界には色んな人間がいる。 お前の痣がささやかなものだと思えるくらい、派手な模様のついた者もいる」 咲良を気遣い、守弥が口添えをする。 「……なんと……! そのようなお方がいらっしゃるのですか? わたくしのように真っ黒な模様なのですか?」 「いや。色とりどりのもある。 金魚や鯉、桜吹雪、雲竜だったりな」 「まあ……っ!」 いやいやそれはもはや痣ではなく刺青だろ、と内心突っ込みを入れるばあ様。 だが。 消極的になりかけていた咲良を連れ出すには、丁度良かったのかもしれない。 出掛けるために守弥と服を見繕い始めた。

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