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「まぁ……っ!」
注連縄の外に初めて出た咲良にとって、世界は全て新鮮なものだった。
濃い緑の森を抜け、滔々と水を湛えた湖。
美しい景色がどんどん後ろに流れていくのだ。
今にも雨が降ってきそうな曇り空がもし快晴であったなら、どんな色彩になるのだろうと咲良は思う。
「なんて美しいのでしょう……!
それに、風のよう……っ。
守弥さまっ、世の中とはこんなに美しいもので溢れているのでございますか?」
初めて乗る車からの景色に、咲良は興奮を隠しきれない。
SUV車からの眺めは、視点が少し高いからか景色が抜群に良いのだ。
隣でハンドルを握る守弥も、ここまで興奮するとは思わなかったらしい。
「もう少し行けば道の駅もあるし、休憩もかねて寄ってみるか」
「みちのえき……?」
「車を停めて一休み出来る場所だ。
ばあ様、いいだろう?」
「そうだねぇ。
急ぐ理由もないし、のんびり行こうかねぇ」
リアシートのばあ様もニコニコしながら頷いた。
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