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大家族揃っての昼食は、咲良にとって新鮮であった。
桜の宮で守弥とばあ様と一緒に囲む食卓とは違い、賑やかなのだが騒がしいものではないし、なんとも楽しい。
漠然と心に抱いていた家族での食事や団欒を、いま自分は経験出来ていると感じるのだ。
心がホコホコして、嬉しくてならない。
付喪神や式神達とワイワイしながら食べていた時のようで。
「今日は何を食べても美味しいな」
「いつもより美味い!おかわり!!」
「食べ過ぎちゃったらダメだよ!とっておきのアレがあるんだからさ!」
「お楽しみだよね!」
もっともっと食べたいが、もうひとつのメインイベントが待ち構えている。
名残惜しいが一旦片付け、皿とスプーンを並べていく。
大皿に乗せられたバケツ型。
栓を外し、ゆっくり持ち上げる。
「「うわあああ!」」
大皿の上に現れたぷりんは、ぷるるんっと揺れて見る者を圧倒した。
「「いっただっきまーす!」」
各自皿に取ると、その度にぷるるんと揺れて甘い香りが立つ。
ぱくんと含めば、卵と牛乳の絶妙なバランスの味わいと甘さが口の中に広がり、豊かな香りが鼻に抜けていく。
「うっ、うめえ!」
「ヤバイぞこれ!止まらない!」
「カラメルソースとのバランスがっ!」
半ばうっとりとしながら味わう姿に、咲良も嬉しくてならない。
「喜んでいただけて嬉しゅうございます。ささ、カラメルソースもたんとございますゆえ」
「ふおおおお!」
「文字通り、理性飛び飛びばけつぷりんだねぇ。
こんなに美味しいプリンをばばは食べたことがないよ」
「…………っ、あ、ありがとうございます……っ」
「彼方から連れてくるときに気づけば良かったな……。
咲良、また作ってくれ」
「はっ、はいっ」
また作ってくれと言われた瞬間、全身がボフッと熱を持つ。
ぎこちない仕草で咲良が取り分けたばけつぷりんは、あっという間に無くなってしまった。
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