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心臓がバクバクと跳ねて仕方なくて、咲良は地面に視線を移す。
「………………っ?」
貝殻や石に混じってキラキラ光るものがあった。
「守弥さま、これは……?」
透明で、緑や青の平べったいもの。
陶器に似ているが、なんだか違う。
拾ってみると、表面はとても滑らかで薄くて角もない。
「陶器とも違いますし、ぼんやり光っているようでもありまする。
これは……、もしや海の結晶でございますか?」
「…………いや、ガラスだ。
ビーチグラスとか言ったかな」
「硝子?あの、窓に使われている硝子なのですか?」
驚きを隠せない咲良に、守弥は丁寧に説明をする。
「窓に使われているものと同じようなものだ。
瓶だったり漁網の浮きだったものが割れて、長い間波に洗われるとこうなる。
表面が擦れてるから、不思議な感触になっているのもあるしな」
「そうなのですね。知らぬこととはいえ……」
「いや……常識に凝り固まっていない目から見れば、海の結晶と言えなくもない。
まん丸のものだけじゃなくて、不思議な形のものもある……これは涙の形に見える。
お前といると、新しい見方が増えておもしろいな」
「………………っ」
目を細めて笑む守弥の表情に、咲良の心臓はドクドクと更に跳ねた。
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