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その水族館は、海辺にちょこんと建っていた。 「大人一名様と、子供さん一名様ですね。 こちらのリストバンドをどうぞ」 受け付けで渡されたリストバンドをゲートで係員につけてもらう。 「お帰りになるまでつけたままでお願いいたしますね」 「はい」 「では、いってらっしゃい」 「ありがとうございます」 床や壁につけられた矢印に沿っていくと、人懐っこいアザラシやペンギンがアクリル板の向こうで挨拶してきた。 「ゴマフアザラシ……、タテゴトアザラシ……、アゴヒゲアザラシ……みんな顔が違うのですね。 ふふ……っ、お目々がくりくりしておりまする」 「繁殖期なら、生まれて間もない真っ白いのがいることもあるぞ。 ほら、この写真みたいのが見れる」 「まぁ……っ!なんと可愛らしいのでしょう……っ」 「ペンギンは、足の甲に卵を乗せて温める」 「足の甲に?割ってしまいそうで、動けなくなってしまいそうです」 「夫婦で交代しながら温めるらしいぞ」 「仲良しさんなのですね」 興味津々の咲良に、ガイド板にない情報を交えて守弥が色々教えてくれる。 殆んど来館者のいない午後のひととき、ほぼ貸し切り状態でゆっくり見ながら進んでいく。

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