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だが。 鏡に映る今の自分の姿はどうだろう。 年相応の背丈には程遠く、肉付きも薄くて頼りない貧弱そのもの。 外へ連れ出してもらうにしても、日の光が弱い曇天や雨の日を選んで貰わねばならないほど……。 いっそ……。 『いっそ、わたくしが本当に女子であったなら……。 初めからわたくしが贄姫の立場であったなら、守弥さまの縁談を潰さずに済みましたものを……』 周囲に気を遣わせ、迷惑ばかりかけてしまっている自分に苛立ちを覚えてしまう。 自分を卑下しない、過小評価しないと約束したのに、欠点ばかりが目についてしまうのだ……。 『こうして並んで立っていても、きっとわたくしが花嫁だと思う方はいないでしょう……。 背丈がもっとあったなら……、咲耶のように溌剌として綺麗な女子であったなら……。 黒い髪と黒い瞳をしていたなら……。 いえ、わたくしが咲耶であったなら、どんなにか……』 じわじわと視界が滲む。 守弥と釣り合う容姿であったなら……。 今まで感じたことが無いモヤモヤしたものが心に広がっていく。 美しくありたい、凛々しくありたい。 守弥と対等とまではいかなくとも、並び立つ存在であれたなら……! そう思わずにいられなくて、咲良は唇を噛んだ。 「……どうした? 何処か痛むのか?」 「…………っ、な、何でもないのですっ、何処も痛くは……」 「なら、何故泣きそうな顔になっている?」 「…………っ!」 心配そうに覗き込む表情に、咲良は心臓を鷲掴みにされた気がした。

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