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思いもかけない言葉に頭が一瞬フリーズする。 かくんっ。 「ひゃっ!」 いきなり座席が後ろに倒れ、視界にあるのは守弥だけだ。 吐息が触れる距離に凛々しい顔があって、心臓がバクバクしてキュウッとなる。 「…………っ」 「何度か話に出てきているから、咲耶のことは俺たちもどんな感じなのかは掴めている。 かなりの美形だということも、それなりに背丈もあることも。 分かった上で、お前がいいんだ。 お前″でも″いいんじゃない。お前″だから″いいんだ。 分かるか?」 「………………」 「寝食を共にしていれば、性質も性格も掴める。 いつも誰かの助けになろうとしているのも、俺の役に立とうと一生懸命頑張っているのも、ちゃんと分かっているんだ。 無理にしようと頑張っているんじゃなく、自然に出来ているのも、俺たちは分かってるんだ」 「……でも……でも……っ」 自分では駄目なのだと言おうとする咲良を、守弥はそうっと制止する。 「背が低いのが何だ? 少しずつ伸びて来ているし、問題なんかないだろう? 性別が同じでも、此方では全く問題ないぞ。 同性で夫婦になってる家もあるし、珍しくもないからな。 今更道が繋がったとしても、彼方にお前を返すつもりはない。 俺も、家族全員もな」 「………………っ」 目をパチクリさせている咲良に、守弥は悪戯っぽく笑ってみせた。

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