502 / 668

「此処へ来たということは、香久良さんの半身を助けたということだと受け止めて良いですか?」 「………ああ」 「ならば、策がない訳ではないです。 姉妹の絆を断って一時的に獣腹の関係を解消するんです」 「それにはどれくらいの時間が要る?」 「半日はかかりませんが…」 残された体力と香久良の体調。 林の向こうに隠した母親の安全も考えれば…。 「難しい、ですね…」 「警鐘音がついて回ると言ったな。 それは、そんなにひどいものか?」 「幾重にも鈴のような音が響きます。 直ぐにではないですが、場所の特定をされやすい。 ……………二人を担いで駆けるのは難しい筈。 ならば、母上に私が同行して後を追う形ならばどうですか?」 「………」 「藪から棒にと思うでしょうが、香久良さんは私の大事な弟子です。 あの子が親身になって看病した人を、最後まで看る。 それも私の役目ですからね」 「………」 「俄には信じられないかもしれませんが、悪いようにはしません。 私は貴方の母上と遠い縁続きの家の者ですし」 「………」 確かに、警鐘音がしなくなるまで里から離れ切るには手段が限られる。 軽々に信じていいものなのか。 悩む余地はない。 時間は残されていない…。 「……………わかった」 今の護矢比古にとって、選択肢は余りにも少なかった。

ともだちにシェアしよう!