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「此処へ来たということは、香久良さんの半身を助けたということだと受け止めて良いですか?」
「………ああ」
「ならば、策がない訳ではないです。
姉妹の絆を断って一時的に獣腹の関係を解消するんです」
「それにはどれくらいの時間が要る?」
「半日はかかりませんが…」
残された体力と香久良の体調。
林の向こうに隠した母親の安全も考えれば…。
「難しい、ですね…」
「警鐘音がついて回ると言ったな。
それは、そんなにひどいものか?」
「幾重にも鈴のような音が響きます。
直ぐにではないですが、場所の特定をされやすい。
……………二人を担いで駆けるのは難しい筈。
ならば、母上に私が同行して後を追う形ならばどうですか?」
「………」
「藪から棒にと思うでしょうが、香久良さんは私の大事な弟子です。
あの子が親身になって看病した人を、最後まで看る。
それも私の役目ですからね」
「………」
「俄には信じられないかもしれませんが、悪いようにはしません。
私は貴方の母上と遠い縁続きの家の者ですし」
「………」
確かに、警鐘音がしなくなるまで里から離れ切るには手段が限られる。
軽々に信じていいものなのか。
悩む余地はない。
時間は残されていない…。
「……………わかった」
今の護矢比古にとって、選択肢は余りにも少なかった。
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