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どんなお仕置きなのだろうと身構えていた咲良にとって、守弥の一言は意外なものであった。
「………………どうしようか。
そうだな………………。
あの超絶に美味いプリンを、毎日作って貰おうか」
「ふぇ……?」
ぷりん?
今、守弥はぷりんと言った。
「ぷ、ぷりんでございますか?」
「ああ」
「それはお仕置きと言うよりも……、わたくしが得意な事……」
「だな」
「それでは、お仕置きではなくて……ご褒美なのでは……?」
何故だか分からないが、どんどん顔が熱くなっていく。
「そこいらのケーキ屋なんか目じゃないくらい超絶に美味いからな。
俺の為に毎日作ってくれ」
「え……、あ、あうぅ……」
クスクス笑いながら零れた涙を指で掬う守弥に、咲良はもう、どう返答すれば良いのか分からない。
「ぷっ、ぷりんだけで良いのでございますか……?」
「プリンの他にも作れるものがあるのか?」
「はっ、はい。
葛餅や羊羹、お団子も作れまする」
「…………そんなにか……」
守弥の目がキラリと光る。
「家に帰る前に必要な物を揃えに行くか。
毎日の楽しみが増えるな」
「ふあぁ……?」
少し乱れた銀髪を指で梳いて整えると、守弥は起き上がって倒したシートを元に戻した。
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