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水族館がある海辺から、幹線道路を抜けて市内へ。 車で向かったのは、スーパーマーケットだった。 夕飯時には少し早いからか、まだ混雑はしていない。 カートにカゴを乗せ、乾物コーナーに向かう。 「みちのえきも沢山ございましたが、ここも品物が溢れるようでございますね」 「そうだな」 「お醤油だけでもこんなに種類があるのでございますか?」 「ああ。 甘口、濃い口、刺身用……様々あるから、用途で使い分けするのもありだな」 守弥にとっては普通でも、初めて外の世界を見る咲良には普通のことではない。 決して否定をしない守弥の反応は、とても好ましいもの……。 何故だかわからないが、胸がドキドキと逸ってしかたない。 「小麦粉、葛粉、片栗粉、蕨粉……。 餅粉や上新粉もあるが、どうする?」 「まぁ……っ、こんなにあるのでございますか? しかも、寒天や小豆も……っ、お砂糖もたんと……!」 「必要な分は、大体こうか?」 「はっ、はい」 大体の目安でカゴに入れていく。 「鍋や道具もいるか?」 「本宮のお台所のもので足りておりまする……」 「そうか? 葛餅なら、銅鍋がいいらしいぞ?」 「……………………?」 いつになく上機嫌な守弥に、咲良は少し戸惑い気味だ。

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