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ファミレスの個室。 入り口側の席に守弥と咲良、奥側の席に志朗と鷲志が座った。 入り口に一番近い席には守弥が座り、何事かがあれば直ぐに咲良を抱えて帰る態勢である。 「そんな番犬みたいにガルガルしなくていいからさ、警戒解いてくんないかな……」 「そっちの駄犬が今にも噛みつきそうだからだろ」 「駄犬って何だよ、駄犬てよ!」 一触即発な守弥と志朗に、咲良もどうしたものか戸惑う。 「あ、気にしなくていいよ。 小さい頃からこんな風にガルガルやってるから。 えーと、名前、なんていうの?」 「さ、咲良と申します」 「どういう字?春に咲くほうの桜? それとも難しい字のほう?」 「いえ、花が……咲くの字に、良い、と……」 「あ、ああ!″咲良″って書くんだ。 俺は鷲志。分家の次男坊だよ。 鳥の鷲に志で鷲志、よろしくねっ」 「はっ、はい、よろしくお願いいたしまする」 「色合いは別として、割りと俺たちの世界に近い次元の子っぽいよね。 家族も皆同じような感じなのかな」 「い、いえ、咲耶……、あ、あの、姉や家族は黒い髪と黒い瞳で……、わたくしだけがこうなのです」 「ふぅん……。 なんかさ、顔立ちは俺たちとおなじ日本人なのに色合いが少し違うから、なんて言えばいいのかな……、物語やゲームの世界から抜け出て来たみたいだよね」 「げーむ……?」 小首を傾げると、鷲志がスマートフォンの画面を咲良に見せた。 「こーんな感じ」 「まぁ……っ、中で可愛らしい女の子が踊っておりますね。 これがげーむなのですか?」 「うん。下の丸いとこをタップ……、うん、光に合わせて指でトントンすると、踊ってくれるんだ」 「不思議でございますねぇ……、守弥……さま?」 横を見ると、守弥はまだ志朗と睨み合っていた。

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