186 / 668

「あの……、どうして悶絶されてるのですか?」 「兄ちゃんが悶絶?気のせいだよ~。気のせい気のせい」 「ああ。全く問題は無いな」 「そりゃねぇだ……」 「しっつれ~しま~す! ご注文の品、お持ちいたしましたぁ!」 志朗が言い切る前に、店員がワゴンを押しながら個室に入ってきた。 「はいっ、爆裂うまうま鶏と雑穀ごはんのセットと、超絶うまうまカツ煮定食と、特製パンケーキ、カリうまポテトと唐揚げセット、紅茶、ウーロン茶、ドリンクバー二点ですね! 追加の際は、タブレットでお願いしまっす!」 手早く配膳して、店員が退室していく。 一気にテーブルの上が賑やかになった。 定食についてきたサラダやフルーツは、鷲志がさりげなく咲良の近くに置く。 「取り分け皿もあるからさ、欲しいのあったら言いなよ。 こっちの焼いた鶏も分けっこできるからさ」 「はっ、はい……」 どれから手をつけようか迷っていると、守弥がパンケーキにナイフを入れてシロップを掛ける。 「咲良」 「はっ、はい」 守弥が差し出したパンケーキは咲良の口に合わせた大きさだった。 「………………」 「大丈夫だ。一口食べてみろ」 「いただきます……っ」 ぱくん。 もぐもぐもぐもぐ……こくん。 「………………っ、お、美味しいです……っ!」 フワフワのパンケーキに、芳醇なバターとシロップの香りと甘さが口の中に広がる。 とにかく美味しい。 「こっちはホイップクリームだから、フルーツと一緒だな。ほら」 「はっ、はい」 ぱくん。 もぐもぐもぐ……こくん。 「どうだ?」 「とっても美味しゅうございます」 「そうか。よかったな」 確かにパンケーキは美味しい。 美味しいのだが……。 何故だろう……、咲良は顔が熱くて仕方がないのだ。

ともだちにシェアしよう!