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「初々しいなぁ……。
守弥が差し出すのを、雛鳥みたいに無防備に食べるのって可愛いよねぇ。
仕草がたまんないわ」
「だからロリ……」
どごおっ!がすうっ!
「おぉう……っ」
「………………いっ、一体なにが……」
志朗が口を開く度に、何故鈍い音がするのだろう。
多分、守弥と鷲志がなにかをしているだろう事は察しているが、二人の逆鱗に触れるような発言はしていないような気がして、咲良は守弥を見上げる。
「…………」
「どうした?」
「あの……、美味しいものを食べているのに、どうして守弥さまは歯を食いしばっているのですか?」
「…………気のせいだ」
「いえ、わたくしの気のせいではありませぬ」
「………………」
実際、テーブルの下では守弥と鷲志の踵が志朗の左右の足の甲をグリグリ踏みつけている。
グリグリというより、ゴリッゴリに。
「せっかく美味しいものを食べているのですから、和やかにいたしませぬと……」
「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………仕方がない、な。
鷲志、お前も足を離せ」
「りょーかい」
不承不承で二人が足を離す。
と……。
「うおおおおおおお……っ、しびしびするうぅぅ……っ」
一気に血流が戻り、両足が痺れて志朗が苦悶の声を上げた。
「これでいいか?」
「……はい」
志朗が苦手ではあるが、食事を前にして悶絶しているのを見るのは嫌だ。
いずれ足の痺れも解消されるだろうし、刺々しい雰囲気も緩んで咲良はホッとする。
『何故守弥さまと鷲志さまがあんなことをしたのかは分かりませぬが、志朗さまの仰ることが引き金なのは分かります。
でも、志朗さまの言葉は途中で遮られていたような……。
守弥さまとわたくしのどちらに対してのお言葉なのか、意味がどうなのか分かればよいのですけれど……』
今まで注連縄の外に出たことがない咲良には分からない。
志朗が言いかけていたのは、守弥が幼女嗜好だと揶揄していたのだと。
意味が分かっていれば、止めなかったかもしれない……。
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