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ある程度冷やしたところに、会計を済ませた鷲志が悄々(しおしお)とうなだれた志朗を連れて来た。 「ごめんな、二人とも。 俺からガッツリ雷落としといたよ」 「あ、ああ」 「咲良ちゃん、ゴメン。 ずっと守弥の手を冷やしてたんだね?」 泣き腫らした目を隠すようにしている咲良を、鷲志がそっと覗き込む。 「わたくしは、何も……。 ただ、守弥さまの火傷はこのままにしてはならないものです。 今からでも診て頂けるお匙(医者)さまはいらっしゃいますか?」 「大抵の皮膚科は閉まってると思うよ。 あとは……救急外来かな……」 「いや、一晩くらいなら……俺は……」 「軽い火傷とは違いまする! 何百度もの熱いものを握り潰した火傷は、一晩様子を見るものではありませぬ!! 何処でございますか、緊急で診てくださるお匙さまに連れて行ってくださいまし!」 「「…………………………」」 一気に捲し立てられて、三人は絶句する。 事が起きる前の咲良は、おっとりとして美味しい食事にニコニコしていた。 それが一転、この剣幕である。 いつもなら守弥の言うことに逆らったりしないのだが、今は違う。 背中の毛を逆立てた猫のように、駄目なものは駄目だと言いきる。 「守弥さまは利き手を負傷されております。 お車を動かすには何かとご不便なのですから、どうにかしていただけませぬか?」 「タクシーを呼ぶには時間がかかるし、救急車を呼ぶにも守弥は歩けるからなぁ……」 「では、志朗さまのお車で連れて行って頂くことは?」 「え!?ダメダメダメ!兄ちゃんの車は煙草の臭いが染み付いてるから、守弥がブチキレちゃうよ!」 「…………………………灰皿の無い個室で迂闊に煙草に火を点けたのはどなたですか?」 「お、俺です……」 「ならば、どうにかする手立てをお考えくださいまし。 今すぐです!」 「………………は、はひ……っ」 背中から陽炎が立ち上ぼり無表情で言い切る咲良に、最早誰も言い返すことは出来ない。 怒っているというよりも、完全にキレている状態に近かった。

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