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「あらららら……。
煙草を握り潰した~?
そりゃこれだけの火傷しちゃうよねぇ」
救急外来の男性医師は、半ば呆れて守弥の手を診ていた。
「この子の言う通りだよ。
熱湯かぶるよりもっと温度が高いんだからね?
700度くらいはあるからねぇ。
ああ、でも、応急処置が的確だったからそんなに深くまで行ってないけど、火傷は火傷だからねぇ……。
お兄さん、無茶は駄目だよ?」
「………………」
小さい子供にするように「めっ!」とたしなめられ、流石に守弥も言葉が出ない。
「お嬢ちゃん、よく手当てしてくれたねぇ。
この手の火傷は、ホントに応急処置が早ければ早いほど効果的なんだよ。
偉かったねぇ」
「いえ、わたくしはなにも……」
「いやいや、大抵は冷やし切る前に止めちゃうからね。
手首を押さえつけて冷やしたんだって?
よくやったよ。
何て言うか……手慣れてるというか……。
前にも同じような事があった訳じゃないよね?」
「……………………、以前……、とても……、とてもお世話になった方も煙草を握り潰したので……。
その時も、大したことはない大丈夫だとおっしゃって、軽く冷やしただけで…………。
でも……、中々治りが良くなかったですし、利き手ですのに、…………引きつれた痕が残ってしまって……」
「なぁるほどね……。
それで手を押さえ込みした訳だ」
「はい……」
「今日の火傷は、ちゃんと治療すれば大丈夫。
ただし、途中で治療を止めたりしたら、痕が残ってしまったり引きつれてしまうからね。
お嬢ちゃんが、しっかり目を光らせてるんだよ?」
「はいっ」
カタカタと素早くカルテに打ち込み、処方箋を薬剤部に送る。
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