193 / 668
・
「………これで、よしっ、と………。
塗り薬と鎮痛剤を受け取られたら、今日はお帰りになって大丈夫ですよ」
「本当に?本当に、大丈夫なのですね?」
「大丈夫。
範囲も狭いし、歩けるから問題ないよ。
って、言われても、目の前で火傷されちゃったもんねぇ……。
直ぐには安心とは言えないよね?
てなワケで、もう無茶はしちゃダメだよ、お兄さん?」
「あ、はい……」
咄嗟のこととはいえ、思わぬ事態を引き起こした守弥だ。
素直に頷くしかない。
「ただ、痛みや引きつれが酷いときは、診療時間外でも構わないからいつでも来てくださいねぇ」
「はい。ありがとうございます。
咲良、兄さんは大丈夫だから、ね?」
「は、はい……」
時雨に促され、咲良も処置室の外へと足を向ける。
大丈夫だと言われても、本当にそうなのか。
手には力が入らないし、足元もフワフワしたままだ。
長椅子に座り、視線をさまよわせる。
ここがどういった規模の病院なのか、本当に大丈夫なのか判断する材料が今の自分にはない。
外を知らず、判断する基準を持たないことに、半ば苛立ちを覚えて……。
「咲良、飲み物でも買いにいこうか。
……………………咲良?」
「……………………………………っ?」
時雨から声を掛けられた事にも気づかないほどに。
ともだちにシェアしよう!