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「最近、変なのです。 守弥さまといるときに、心が物凄く浮き立ったり凪いだりいたします。 それだけではなく、きゅううっと軋んだり、顔や体が熱くなったり」 「そうなんだ。 兄さんといるのは辛い?」 「いえ。 辛くはございませぬ。 寧ろ……」 「寧ろ?」 咲良の中にある想いを、慎重に引き出していく。 ゆっくり、確実に。 「……………………辛くはなく、…………寧ろ……、寧ろ……、………………っ」 一生懸命言葉を探しているのだろう。 答えの端を教えるのはたやすい。 だが、それでは駄目なのだ。 「言って。 心に浮かぶ気持ちを言葉にしてみてよ。 絶対怒ったり笑ったりなんかしないからさ」 「…………っ、うぅ……。 こうして……心がザワザワするのも、喜ばしいと思うのです。 それから、…………どうしてわたくしは……女子として生まれて来れなかったのか……。 忌み子であったのか……。 いえ、…………いっそ、咲耶であったならと、自分に怒りを覚えたりいたしまする……」 「………………」 中身は15歳だと分かってはいる。 だが、外界と遮断されて育ったからか、幾分心が幼いのだと時雨は感じていた。 だが、咲良の中には守弥への思いが宿り、確実に育って来ている。

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