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「でも、わたくしは男子として生まれてしまいました。 守弥さまに対してこういう気持ちを持つというのは、罪深いことではないのでしょうか……」 「…………」 「忌み子として生まれたのに、花嫁として界渡りをしたこと……。 男子なのに、守弥さまにこういう気持ちを抱くようになったことで、何か守弥さまに差し障りが出てしまわないのでしょうか……」 途切れ途切れではない言葉は、咲良の本心が素直に出ていることの証。 自分がどうと言うより、守弥を気遣うもの。 『完全ではないにしろ、兄さんに対しての気持ちは恋愛感情に近いよね……。 でも、あからさまにせっついたら、逆に拗らせちゃうかもなぁ……』 咄嗟に煙草を握り潰した守弥と、守弥を気遣う咲良。 二人の間にある感情が育って、出来るなら成就してほしい。 守弥が石になるか、咲良の命が尽きてしまう前に…………。 「咲良は、怖いと思うのかな……?」 「…………はい。怖いです。 わたくしが持ってしまった気持ちのせいで、守弥さまに差し障りが出たり、困らせてしまわないかと」 「そっか……。 たしかに、同性でそういう気持ちって戸惑うよね。 でもさ、こっちの世界では同性で夫婦になってる人達もいるよ。 罪深いってことはないと思う。 それにさ……」 「………………」 「みんな咲良が可愛くて仕方ないから、兄さんの花嫁になってさ、俺たちの本当の家族になってくれたら嬉しいな」 「………………っ」 白磁の肌が淡く染まる。 その表情すら、可愛くて仕方ないと時雨は思うのだ。

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