199 / 668
・
◆◇◆◇◆
ごぉんっ!
「申し訳ありませぬ!」
居間に着くなり、咲良は三つ指をついて頭を下げた。
結構な音だったため、守弥の両親もきょうだいも一瞬硬直する。
「そんな、顔をあげてちょうだい。
咲良ちゃんのせいではないのだもの」
「そうだよ。志朗が禁煙ルームで煙草に火をつけたのが悪いんだし」
「うさこは悪くないっ」
「えうう……」
眉間の当たりがキナ臭い感じがしている状態で引き起こされて、視界が安定しない。
「だってさ、うさこは兄ちゃんの手当ても頑張ったんだよ?
自分のせいとか思っちゃダメ!」
「そうだよ、咲良は悪くない!」
「ひゃっ」
次々ギュウギュウされ、何がなんだか分からない。
ぺとっ。
「ひゃうぅっ!」
「はい、そのくらいにしとこうか~」
額に冷たい感触がしたあと、抱きつく子供らの間から引っこ抜かれた。
肩に咲良を担いだまま、時雨はきょうだい達を蹴散らして歩きながら、然り気無くばあ様に目配せをする。
「はい、退いた退いた~」
「あっ、時雨兄ちゃんずるい!オレも抱っこしたいのに!」
「あたしもまだ抱っこしてないわよ!」
「いいから、いいから。
兄さん、胡座じゃなくて真っ直ぐのばして」
「…………?」
「伸ばさないと話になんないんだよね。
…………はい、どうぞ」
守弥の膝の上に咲良を乗せ、時雨は台所へ行ってしまった。
ともだちにシェアしよう!