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「すっかり気に入られちゃったねぇ」 「………………」 「舅姑、小舅と小姑全てに気に入られるなんて、なかなかない事だよ。 健気で可愛い花嫁で良かったねえ、守弥」 「何故俺に振るんだ……」 「ん? 負けん気が強い子より、尽くすタイプが好きじゃなかったかねぇ?」 「しかも小動物っけ満載でしょ? 兄さんにとって、またとない優良物件じゃない」 「………………?」 ばあ様と時雨の言葉が微妙に分からず、担がれたまま咲良は首を傾げる。 「小動物……?物件……?」 「悪い意味じゃないから安心しといて。 咲良の事を皆が気に入ってるってことだからさ」 「そうなのですか……?」 「気が強くてワガママなタイプが苦手だからねぇ。 ばばも、さくらが来てくれて良かったと思ってるよ」 「………………っ」 縁談を台無しにしたというのに、誰一人否定しない。 それどころか、家族の一人として扱うほとで。 ……ただ一人、岩屋の中でひっそり死ぬ定めと言われて育った咲良にとって、これほどの幸せは無い。 それなのに、守弥を火傷させてしまった……。 『あのときのように、泣いてばかりでは駄目……。 引きつれて痕が残るようなことには、決していたしませぬ……! わたくしが出来る最善の事を……っ』 「…………?」 ギュウッと自分の服を握る咲良の心の内を、守弥は照れているのだと思っていた。 変化の兆しが少しずつ現れているとは、誰も気づかないまま……。

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