205 / 668

座敷から出て、静まり返った廊下を進む。 もう全員が寝てしまったのか、ぽつぽつと灯る常夜灯しか見えない。 小さな子供であれば怖さを覚えるだろうが、禍々しいものがいる訳でもないので守弥の気配を探す。 「えっと……、守弥さまは…………、あ……」 慣れ親しんだ気配を追って、静かに廊下を進む。 家の中とはいえ、深夜に歩き回っているのは良くないのは分かっている。 枕が変わったら眠れないという訳でもないのだから、寝てしまえばいいだけで。 「でも……」 眠れないのだ。 窓から射し込む月明かりの中、守弥の気配に向かって歩く。 『………………ここ……?』 ドアの前に立つ。 来てみたものの、ドアノブに手を伸ばせない。 『どういたしましょう……。 来てはみましたけれど、守弥さまが眠ってしまっていたら……。 せっかくお休みになっているのを起こしてしまうのは……』 今日は外に連れ出して貰ったし、煙草でやけどもしている。 きっと疲れて寝てしまっているに違いない。 『やっぱり、戻った方がいいのでしょうか……』 アザラシのヌイグルミを抱いたまま、引き返そうとした瞬間……。 カチャ……っ。 「咲良か?」 「……………………っ?」 開いたドアの向こうに守弥がいた。

ともだちにシェアしよう!