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開花
たった一晩。
ほんの、数時間のことだった。
咲良の身長が20センチほど伸びていた。
変化はそれだけではない。
心臓の真上に、桜の痣が広がっていた。
「なんでいきなり範囲が広がったんだ……」
「わたくしにも分かりませぬ……」
一晩で増えた痣は一つ二つではなく。
十を越えている。
思い当たる節はない。
「気になることは幾つもあるけど、丈の短いパジャマじゃ風邪を引いちゃうからねぇ。
時雨、合いそうな服を見繕ってきておくれ」
「りょ~かい」
混乱気味の咲良を気遣って付き添う守弥。
少しでも落ち着かせようと背中を擦っていると、妙な違和感に気付いた。
両手が同じように使えるのだ。
「………………?」
寝る前にチリチリと響いていた痛みを感じない。
「痛く……ない……?」
「え?」
「昨日の火傷が?まさか……」
「ばばに見せてごらん」
一晩で簡単に痛みが引くような火傷ではなかった筈だ。
包帯を外し、ガーゼを取り去る。
「「………………っ!?」」
その場にいた全員が目を疑った。
「うそ……」
「あれだけの火傷が……」
「そんな……、まさか……」
煙草が原因で負った筈の火傷が、綺麗サッパリ消え失せていたのだ。
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