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高温の物を握って負った火傷の筈だ。 決して一晩では完治しないもの……。 そして、いきなり増えた咲良の痣……、それが増える要素は分かっている。 「…………っ、まさか……、お前……?」 「…………?」 「さくらが火傷を肩代わりしたってことかねぇ……」 「……わたくしが…………? でも、今までわたくしが肩代わり出来たのは、咲耶や、両親、きょうだいだけでございます。 血の繋がりがない方は、一度も……。 それに、肩代わりした時に痣は増えましたが、成長することもございませんでした」 今までは無かった現象に、咲良も驚きを隠せない。 だが、跡形もない火傷と痣が増えたことを突き詰めれば、肩代わりをしたとしか思えない。 「ばばが見てみようか。 さくらと守弥以外、部屋の外に出てもらうよ」 「……は、はい」 「そうね、それが一番いい」 「…………」 「時雨を呼んでおいで。 人払いをするからね」 「はいはーい。呼んだ?」 「内と外から人払いの術をかけたいんだよ。 いつものじゃなく、厳重に」 「りょーかい」 いつになく厳しい顔つきのばあ様の様子に、家族も口を挟まず廊下に出る。 見繕ってきたカーディガンを咲良に渡し、時雨も部屋の外に出た。 「「……………………」」 時雨とばあ様がドアを挟んで向かい合う。 人払いと言うよりも、此方の空間と外を遮断する方向らしい。 きっちり封じた上で、人形(ヒトガタ)の呪符を張り付けた。 「これでよし」 うんうんと頷き、二人の前に戻る。 「それじゃあ、始めようかねぇ」 「………………あ……っ」 「咲良……、………………?」 強制的に意識が落ちていく。 守弥と咲良は、ベッドの上に倒れ込んだ。

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