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「…………″こさま″……?″……こ″さま……かねぇ」 何処かで聞いた名前だ。 『やめろ……ぐ……』 『やめませぬ……わたくしは、もう…………さまの苦しみを……』 「………………?」 お互いの名前が断片的だが、確かにばあ様は聞いた記憶がある。 『…………一人でお前が背負うな……、かぐ……』 「かぐ…………?」 それも聞かされた覚えのある話だ。 確か、神代に近いころの伝承に無かったか。 ″かぐ″と名のつく二人の姫の記録が。 「まさか……そんなことは……」 実在していた確証はなく、力を暴走させぬようにと戒める昔語りだと思っていた。 鬼の力は境界の裂け目を修復するためのもの。 みだりに使ってはならないのだと……。 『やめろ…………もう背負わなくていい……かぐ……』 『いやです……わたくしはもう、流されたくない……ひこさまを……っ!』 「………やはり………っ! 闇断ちと闇堕ちの比古……!?」 しゃあんっ! 「ああっ!」 辿りの糸が切れ、術が遮断された。

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